認知行動療法プログラム
はじめに
認知行動療法はこんな方に有効です
認知行動療法(CBT)は、自分の考え方や行動のクセに気づき、少しずつ変えていくことで、心のつらさを和らげる方法です。
※(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)
このプログラムは、以下のような方に特に役立ちます。
• 日常生活で不安や落ち込み、イライラが続いている方
• 自分の考え方が偏っていると感じるが、どう直せばよいかわからない方
• ストレスや心配事で気持ちが疲れやすい方
• 気分の波に振り回されず、安定した毎日を送りたい方
• 自分で心の状態をコントロールし、前向きに生きていきたい方
• 専門機関に行くほどではないけれど、セルフケアの方法を知りたい方
認知行動療法は、心の健康を保つための「セルフケアツール」として、誰でも取り組める方法です。
この12週間のプログラムを通じて、自分らしい心の整え方を身につけていきましょう。
第1週講義
「認知行動療法って何?」
〜考え方・気分・行動のつながりを知ろう〜
【はじめに】
「なんだか最近、気分が落ち込みがち…」「すぐに不安になってしまう」
そんな気持ちが続くと、「自分が弱いからかも」と責めてしまいがちですが、CBT(認知行動療法)は、そうした状態を“考え方のクセ”と“行動パターン”の視点から整理し、少しずつ気持ちをラクにしていく方法です。
【今週の目的】
• 認知行動療法(CBT)の基本的な考え方を理解する
• 「考え方」「気分」「行動」の関係性を知る
• 自分の心のクセに気づく準備をする
1. 「心の中の3つの動き」
私たちが日々感じていることには、大きく3つのレイヤー(layer:階層)があります。
出来事(状況):何が起こったか、に対して
1.自動思考(とっさに浮かぶ考え):その時に頭に浮かんだこと
2.気分・感情:思考をもとに感じた気分(例:不安、怒り、悲しみ)
3.行動:その気分に基づいてどう行動したか
例:
• 出来事:「上司に挨拶したけど、無視された」
• 自動思考:「怒ってるのかも。嫌われてる?」
• 気分:「不安」「悲しみ」
• 行動:「挨拶するのが怖くなってしまった」
2. 自動思考とは?
「自動思考」とは、瞬間的に浮かぶ“つぶやき”のようなもので、普段は意識していないことが多いです。
でもこの考え方が、実は私たちの気分を大きく左右しているのです。
自分の気分に影響を与えているのは、出来事そのものではなく、それに対する自分の考え方なのです。
3. 「考え方」が変われば「気分」も変わる
• 「嫌われてるかも…」という自動思考が浮かべば、不安に
• 「たまたま気づかなかっただけかも」と考え直せば、気分は落ち着くかもしれません
認知行動療法では、こうした「考え直す練習」を通して、感情の揺れをやわらげていくのです。
4. まずは気づくことから
今週の目標は、「考え」「気分」「行動」の関係を意識することです。
宿題:
1. 気分が大きく動いた出来事を1つ思い出す
2. 夢ノートに記入する
出来事 浮かんだ考え 感じた気分 とった行動
(例)
| 出来事 | 友達からLINEの返事が来ない | 嫌われたかも | 不安 | LINEを見返して何度もため息 |
【おわりに】
「心を変えたい」と思ったとき、「心のしくみを理解すること」から始めます。
すると、少しずつ自分への見方がやさしくなっていきます。
CBTは“練習すれば身につく技術”です。今週はその第一歩です。
第2週講義
「気分を記録してみよう」
〜心の波を“見える化”してみる〜
はじめに
先週は、「気分」「思考」「行動」がつながっているというお話をしましたね。今週は、気分の“波”を記録することにチャレンジします。
気分は一日の中でもゆらゆらと変化します。言葉にすると漠然とした「気分」も、数値や言葉にして“見える化”することで、自分の状態に気づきやすくなり、感情の扱い方がぐんとラクになります。
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● 今日の目的
• 気分を点数や言葉で表現してみる
• 1日の中でどんな場面で気分が変化するかに気づく
• 「気づく力」を育てる第一歩を踏み出す
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● 1. 「気分ってなんだろう?」
「気分」は、思考とも体とも密接に関係しています。
たとえば:
• 胸がドキドキ → 不安
• 体がだるい → 落ち込み
• 背筋がシャキッ → やる気
気分は目に見えないけれど、体や言葉の変化から推測することができます。
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● 2. 「気分を数値で表す」練習
例:
• とてもいい気分:100点
• 普通:50点
• とてもつらい:0点
今日はこんなふうに、自分の気分を点数で表現する練習をしてみましょう。
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● 3. 気分記録シートの活用
書き方の例:
時間 出来事 気分の点数 感じた気分(言葉で)
8:00 目覚めて朝ごはんを食べた 60点 少し疲れていたけど、まぁまぁ
10:00 仕事で注意された 40点 落ち込み、不安
13:00 同僚と楽しくランチ 70点 安心、楽しい
18:00 帰宅後、家族と会話 55点 少し疲れてるけど安心
このように、1日数回、気分を点数と気持ちの言葉で記録していきます。
特に「上下したとき」に注目しましょう。
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● 4. なぜ記録が大事なの?
• 客観的に気分の変化を見られるようになる
• “きっかけ”となった出来事や考え方に気づきやすくなる
• 「ずっと落ち込んでいたと思ったけど、楽しかった瞬間もあったな」と事実を確認できる
記録することで、気分に飲み込まれずに「距離を取る」ことができるのです。
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● 今週の宿題
• 1日3回以上、気分の点数とそのときの気持ち・出来事を記録する
• 特に点数が大きく上下したときは、その理由をメモしておく
書き方テンプレート(ノートでもOK):
時間 出来事 気分(0〜100点) 気持ちの言葉
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● おわりに
「気分の見える化」は、CBTの第一歩。
記録を続けていくことで、自分のパターンに気づき、「なるほど、こういうときに気分が下がるんだ」と冷静に対処できるようになります。
まずは、今日の気分に名前をつけてみましょう。
第3週講義
【第3週講義】「状況・気分・自動思考」
〜出来事そのものより、“そのとき浮かんだ考え”に注目してみよう〜
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● はじめに
これまでに「気分」「行動」「考え方」がつながっていること、そして気分を記録して“見える化”する練習をしてきましたね。
今週はいよいよ、CBTの中心的なポイントである**「自動思考」**に注目していきます。
気分が大きく動いたとき、私たちはどんな考え(つぶやき)を心の中でつぶやいていたのでしょうか?
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● 今日の目的
• 「気分の変化」が起こる背景にある「自動思考」に気づく
• 「状況・気分・自動思考」の三つの流れを理解する
• 自分の考え方のクセに少しずつ気づきはじめる
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● 1. 「自動思考」とは?
自動思考とは、「ある出来事」に直面したとき、瞬間的に心に浮かぶ考えのことです。
たとえば:
• 友達からLINEの返信が来ない
→ 「嫌われたかも」
• 人前で失敗した
→ 「私はダメな人間だ」
これらの考えは反射的に浮かんでくるので、意識しないと見落としてしまいがちです。でも、この考えが気分を大きく左右しているのです。
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● 2. 例で考えてみよう
例1:
• 出来事:知り合いに道ですれ違ったが、無視された
• 自動思考:「私のこと、嫌いになったのかも」
• 気分:不安・寂しさ(気分40点)
例2:
• 出来事:ミスをして注意された
• 自動思考:「こんなことで怒られるなんて、私は社会不適合者だ」
• 気分:落ち込み(気分30点)
→ 実際の出来事よりも、「そのとき何を思ったか」が、気分を決めていることがわかります。
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● 3. 「状況・自動思考・気分」の三点セットで記録する
今週からは、以下の3つをセットで記録してみましょう。
出来事(状況) 自動思考(浮かんだ考え) 気分(点数・言葉)
仕事の打合せで発言を間違えた みんなにバカにされたに違いない 恥ずかしい、不安(40点)
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● 4. 書き出すことで「距離」がとれる
書き出してみると、「あれ?本当にそう思われていたのかな?」「そう決めつけなくてもいいかも」と、考えに“ゆとり”が出てきます。
この「見直す練習」は次週以降に詳しく扱いますが、今週はまず自分にどんな“考えグセ”があるかを知ることに集中しましょう。
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● 今週の宿題
1. 気分が大きく動いた場面を思い出す、または当日に記録する
2. 以下のフォーマットで1日1~2件程度、書いてみる
記録シート例:
出来事 自動思考 気分(点数・言葉)
夕食時、家族が黙っていた 機嫌悪いのは私のせいかも 不安(45点)
友人からの連絡が遅い 嫌われたのかも 寂しさ(50点)
※無理に正解を出そうとしなくてOK。自分の心の声を“そのまま”書くことが大切です。
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● おわりに
私たちは「出来事」そのものではなく、そこから浮かんだ「考え」によって気分が揺れています。
だからこそ、その考えに気づくことで、少しずつ気分のコントロールがしやすくなるのです。
「気分が下がったとき、自分はどんなふうに考えていたかな?」
この問いかけを、今週はゆっくり大切にしてみましょう。
第4週講義
【第4週講義】「自動思考のクセ(認知のゆがみ)を見つけよう」
〜考え方の“偏り”に気づくと、気分が軽くなる〜
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● はじめに
前回は「自動思考」に注目し、出来事に対してどんな考えが浮かんでいたのかを記録しましたね。
今週は、浮かんだ考えにどんな“クセ”や“偏り”があるのかを見つけていきましょう。
これを「認知のゆがみ」と呼びます。
「ゆがみ」と聞くと悪い印象を受けるかもしれませんが、誰にでもある“思考の偏り”のことです。
気づくだけでも、気分がふっと軽くなることがありますよ。
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● 今日の目的
• 自動思考に含まれる「思考のクセ(認知のゆがみ)」に気づく
• よくある10のゆがみパターンを知る
• 「この考え方、ちょっと極端かも?」と立ち止まる練習をする
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● 1. 「認知のゆがみ」って?
私たちは、無意識のうちに“偏った見方”をしてしまうことがあります。
たとえば:
• 「あの人に挨拶しても返事がなかった → 嫌われてるに違いない」
→ 他の可能性を無視して、一つの見方にとらわれてしまう
これが“認知のゆがみ”です。
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● 2. よくある「認知のゆがみ」のパターン
ここでは代表的な10パターンをご紹介します:
ゆがみのタイプ 説明 例
1. 全か無か思考 白黒で考える 「うまくできなかった=全てダメ」
2. 一般化のしすぎ 1回のことをすべてに当てはめる 「一度失敗→もう一生うまくいかない」
3. 心の読みすぎ 相手の気持ちを決めつける 「たぶん嫌われてる」
4. 先読みの思考 未来を悪く予測する 「きっと失敗するに違いない」
5. 拡大・縮小解釈 ミスを大きく捉えたり、成功を過小評価 「あんな失敗、致命的だ」
6. 感情的決めつけ 感情を事実と混同する 「不安だから、ダメに違いない」
7. すべき思考 「〜すべき」で自分を縛る 「私は完璧でなければならない」
8. レッテル貼り 自分や他人に極端なラベルを貼る 「私は負け犬だ」
9. 個人化 自分のせいにしすぎる 「家族が疲れてるのは私のせい」
10. ポジティブ無視 良い点を軽視する 「うまくいったのは偶然だ」
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● 3. 実例で考えてみよう
例1:
• 出来事:会議で一言も発言できなかった
• 自動思考:「私はダメな人間だ」
• ゆがみのタイプ:レッテル貼り・全か無か思考
例2:
• 出来事:LINEの返信がない
• 自動思考:「たぶん嫌われたんだと思う」
• ゆがみのタイプ:心の読みすぎ・先読みの思考
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● 4. 「もしかして…?」と思うだけでOK
思考のクセに気づくと、それだけで「本当にそうかな?」と距離を置くことができます。
ゆがみに気づくことは、自分を責めるためではなく、「見直すチャンス」をつくることなのです。
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● 今週の宿題
1. 前週の記録から、自動思考の「ゆがみ」に当てはまりそうなものを探してみましょう
2. 下のように表を活用して整理してみましょう:
出来事 自動思考 ゆがみのタイプ 気づいたこと
友人から返信が来ない 嫌われたのかも 心の読みすぎ 忙しいだけかもしれない
※「どれに当てはまるかわからない」と思ったときは、「少し極端だったかも?」という視点だけでもOKです。
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● おわりに
人の心は、柔軟なようでいて、意外と“決めつけグセ”があります。
でもそれに気づけたとき、心の中に「ほんの少しの余白」が生まれます。
この余白こそが、気分をラクにする力です。
来週は、この“考えの見直し方”を学び、「もっと現実的な見方」に変える方法を練習していきます。
第5週講義
【第5週講義】「現実的な考え方にチャレンジしてみよう」
~心の“つぶやき”にツッコミを入れてみる練習~
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● はじめに
これまでに、自動思考(とっさに浮かぶ考え)と、それに含まれる“思考のクセ(認知のゆがみ)”に気づく練習をしてきましたね。
今週はいよいよ、その考え方を**「現実的な視点」**から見直してみる練習です。
浮かんだ自動思考に「本当にそうかな?」「別の見方はあるかな?」と問いかけてみることで、気分や行動にも変化が生まれます。
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● 今日の目的
• 浮かんだ自動思考にツッコミを入れる練習をする
• よりバランスの取れた「現実的な考え方」に近づけてみる
• 気分の変化を感じ取る力を育てる
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● 1. 自動思考にツッコミを入れてみよう
私たちは無意識のうちに、かなり厳しい「内なるつぶやき(自動思考)」をしていることがあります。
たとえば:
「また失敗した。私は何をやってもダメだ」
→ 本当に?100%そう言い切れる?
→ 成功したこともあるんじゃない?
→ 他人はそこまで気にしていないかも?
このように、自動思考に対して**“やさしく突っ込んでみる”**ことが、思考の見直しの第一歩になります。
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● 2. 自動思考を見直すための4つの質問
浮かんだ考えを、次のような質問で見つめなおしてみましょう:
1. その考えの証拠は?
― その考えを裏付ける具体的な事実はありますか?
2. 別の見方はある?
― 他の人だったらどう考えると思いますか?
3. もし友達が同じことを言ったら、何て声をかけますか?
― 自分に優しくなる練習です
4. 今までの経験と照らしてどう?
― 過去にも同じようなことがあって、実際はどうだった?
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● 3. 記録のしかた(ワーク例)
出来事 自動思考 認知のゆがみ 現実的な考え 気分の変化
上司に声をかけたら無視された 嫌われたのかも 心の読みすぎ 忙しくて気づかなかっただけかも 不安60→40
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● 4. 「現実的な考え」は“ポジティブ思考”とは違う
ここで注意したいのは、現実的な考え=「前向きで明るい考え」ではないということです。
たとえば:
• ✖「絶対うまくいく!」(思い込み)
• ○「うまくいくかはわからないけど、今できる準備はした」(現実的)
大事なのは、根拠のあるバランスのとれた視点を持つことです。
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● 今週の宿題
1. 前回までに記録した「自動思考」の中から、ひとつ選んで
2. 4つの質問を使って「現実的な考え方」を書き出してみましょう
3. 気分の変化があれば、それも記録してみましょう
ワークシート形式(ノートでもOK):
出来事 自動思考 現実的な考え 気分の変化
子どもが話を聞いてくれなかった 私は親として失格だ 疲れているだけかも。今まで頑張ってきたはず 悲しみ60→45
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● おわりに
考え方を変えると、世界の見え方も変わってきます。
でも、それは一瞬で変わるものではありません。
「ツッコミを入れてみようかな?」と1日に1回でも思えたら、もう立派な変化です。
来週は、この“現実的な考え方”をさらに育て、日常での実践(行動)につなげていく方法をお伝えします。
第6週講義
【第6週講義】「現実的な考え方に基づいて行動してみよう」
~頭だけでなく、体を動かすことで不安や落ち込みにアプローチ~
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● はじめに
前回は、自分の自動思考に「本当にそうかな?」と問いかけ、現実的な考え方に置き換える練習をしました。
今週は、その考えをもとに、実際に小さな行動を起こしてみることに挑戦していきます。
不安や落ち込みは「考え」だけでなく「行動」からも変えていくことができます。
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● 今日の目的
• 現実的な考えに基づいた“行動”を考える
• 小さな行動を実際にやってみる
• 行動によって気分がどう変わるかを確かめてみる
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● 1. 考えを変えても気持ちが晴れないときは?
現実的に考え直しても、まだ気持ちが沈んでしまうときがあります。
そんなときは、「まず動く」ことが効果的です。
たとえば:
• 「またミスした。ダメな人間だ」→「まだ慣れてないだけ。今は復習してみよう」
→ → 実際にマニュアルを見直してみる
このように、考えの見直しを「行動」で確かめることで、より確信が強まり、安心感が生まれます。
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● 2. 行動につなげるコツ
以下のように考えてみましょう:
• 自動思考:「きっと迷惑に思われる」
• 現実的な考え:「本当にそうとは限らない。挨拶してみよう」
• 行動例:笑顔で「おはよう」と言ってみる
ポイントは、小さくていいということ。
「少しだけやってみる」「試してみる」という感覚でOKです。
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● 3. 記録のしかた(ワーク例)
出来事 自動思考 現実的な考え 実際にやってみた行動 気分の変化
仕事で失敗 私はダメだ 誰でも失敗はある。対処できるかが大事 先輩に報告&対策を相談 不安80→50
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● 4. 動いた自分をちゃんと認めよう
「やってみたこと」には必ず意味があります。
たとえ結果が思ったようにいかなくても、「行動した」こと自体が、落ち込みの沼から一歩外に出た証拠です。
できた自分を認めること=心の筋トレ
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● 今週の宿題
1. 前回の「現実的な考え」をもとに、「できそうな行動」をひとつ決めてみましょう
2. 実行したら、そのときの気分の変化を記録してみましょう
ワークシートの例:
出来事 現実的な考え 小さな行動 気分の変化
子どもに無視された気がした 疲れているだけかも 「今日疲れた?」と優しく声をかけた 不安60→40
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● おわりに
考え方を見直すだけでなく、行動することが気持ちの流れを変える力になります。
不安や落ち込みは、じっとしていると強まることがあります。
でも、ほんの少し動くだけでも、心は動き始めます。
次回は、不安や落ち込みの「悪循環」を断ち切る行動パターンの修正について学びます。
第7週講義
【第7週講義】「回避ややりすぎの行動パターンに気づこう」
~一時的な安心が、長期的なつらさを招いていないか見直してみよう~
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● はじめに
ここまでの講義では、「自動思考」に気づき、「現実的な考え方」に変えて、小さな行動に移すことまで進んできましたね。
今週は、自分が日常的にとっている**“行動のクセ”**に注目していきます。
特に、次のような行動パターンに心当たりはありませんか?
• 不安だから、つい避けてしまう(回避)
• 不安だから、何度も確認してしまう(やりすぎ)
これらの行動は一時的には安心できますが、長期的には不安や落ち込みを強めてしまうことが多いのです。
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● 今日の目的
• 「回避」や「やりすぎ」といった行動パターンを整理する
• それが自分の気分や考えにどんな影響を与えているかを見直す
• 自分にとって“ちょうどよいバランス”を探る
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● 1. 「行動の悪循環」とは?
例えばこんな例があります:
• 出来事:LINEを送ったけど返信がない
• 不安な考え:「嫌われたのかも」
• 行動:何度もメッセージを見返す、相手に再送する
• 結果:安心できず、ますます不安になる
このように、一時的な安心のためにとった行動が、不安を強化する悪循環になっていることがあるのです。
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● 2. よくある行動パターンの例
パターン 行動の例 結果
回避 電話に出ない、人前で話さない、嫌な話題を避ける 不安は減るが、行動範囲が狭まり自信がつかない
やりすぎ 何度も確認、謝る、検索する 一時的な安心、でもまた不安が戻ってくる
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● 3. なぜ見直すことが大事なの?
私たちは「安心したい」気持ちで回避ややりすぎ行動をとりますが、
それによって本当の自信や安心感が得られなくなってしまいます。
**「安心グセ」より「自信グセ」**を育てることが、回復への近道です。
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● 4. 記録のしかた(ワーク例)
出来事 自動思考 行動 行動のパターン 結果(気分や状況)
SNSでいいねが来ない 嫌われた? 何度も投稿を見返す やりすぎ 不安が続く、疲れる
会議で発言を求められる 変なことを言ったら… 発言を断る 回避 安心はするが自己嫌悪が残る
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● 今週の宿題
1. 最近の出来事で「避けたこと」や「やりすぎたこと」を思い出して記録してみましょう
2. それがどう気分や自信に影響しているか、整理してみましょう
ワークシート形式:
出来事 行動 行動のパターン 影響(気分・自信)
メールの誤字が不安 何度も読み返す やりすぎ 疲れた、でもまだ不安
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● おわりに
不安や落ち込みから自分を守るための行動が、
実は自分の心を追い込んでしまうことがあります。
「やらないようにしよう!」と急にやめる必要はありません。
まずは気づくことが第一歩。
「私はこういうとき、こう動く傾向があるなあ」と優しく見つめてみてください。
次回は、これらの行動パターンを少しずつ変えていく実践方法を学びます。
第8週講義
【第8週講義】「悪循環の行動パターンを変えてみよう」
~“やめる”より、“ちょっと違うやり方を試す”ことから~
⸻
● はじめに
前回は、不安や落ち込みを強める「回避」や「やりすぎ」の行動パターンを振り返りました。
今週は、その行動パターンを少しずつ変えていく方法を練習していきます。
不安な気持ちにまかせて「つい」やっていた行動を、
「自分の意思」で「別のやり方」に置きかえる練習です。
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● 今日の目的
• 「やりすぎ」や「回避」行動を見つけたら、少しだけ変えてみる
• やめるのではなく、“違う行動”を選んでみる
• 行動が変わったとき、気分や自信がどう変わるか体験する
⸻
● 1. “やめる”は難しい。だから「代わりにやってみる」
たとえば:
■ いつも:人前で発言を避ける(回避)
↓
■ 今週:短い一言だけ話してみる(代わりの行動)
■ いつも:何度もドアの鍵を確認する(やりすぎ)
↓
■ 今週:1回だけ声に出して確認 → それ以上はメモを見る
大事なのは、「無理にやめようとしないこと」。
ほんの少しだけ違うやり方を試すことから始めてOKです。
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● 2. ポイントは「できる範囲で」×「少しずつ」
例:
パターン いつもの行動 新しい行動の例
回避 誘いを断る 短時間だけ参加してみる
やりすぎ メールを10回見直す 3回でやめて、送信後は他のことをする
回避 嫌な話題を避ける 聞くだけでOK、自分の意見は言わなくていい
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● 3. 行動実験として考えてみよう
行動の変化は「挑戦」ではなく、「実験」としてとらえましょう。
うまくいってもOK。
うまくいかなくても、「なるほど、こうなるのか」という気づきがあれば十分。
どんな結果でも、自分の中に“データ”が増えることが大切です。
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● 4. 記録のしかた(ワーク例)
いつもの行動 新しく試した行動 実行してみての感想 気分や自信の変化
電話を避ける 5分だけかけてみた 思ったより普通に話せた 少し自信がついた
不安で確認する 声に出して1回確認 → 終わり まだ不安だけど前よりマシ 不安80→60
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● 今週の宿題
1. 自分がよくしている「回避」や「やりすぎ」の行動をひとつ選ぶ
2. 「代わりにやってみる行動」を考え、実際にやってみる
3. 気分や自信にどんな変化があったかを書き留める
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● おわりに
「行動を変える」ことは、とてもエネルギーのいることです。
だからこそ、小さくてOK。たとえば:
• 「5分だけやってみた」
• 「今日は途中まででやめてみた」
それだけでも、脳と心は「おっ、いつもと違うぞ」と感じています。
“ほんの小さな変化”が、のちの大きな変化の種になります。
次回は、さらに前向きな行動=**“心の栄養になる行動”**を増やす方法を学びます。
第9週講義
【第9週講義】「心の栄養になる行動を増やそう」
~気分がよくなる行動を、意識して“取り入れてみる”~
⸻
● はじめに
ここまで、つらさを強める「悪循環の行動パターン」を見直し、
少しずつ違う行動を試してきました。
今週は、さらに一歩進めて、「気分がよくなる行動」=心の栄養になる行動を
日常に意識的に増やしていくことを目指します。
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● 今日の目的
• 「心の栄養になる行動」を自分なりに見つける
• それを毎日の生活に意識して取り入れる
• 「楽しいからやる」ことの大切さを再発見する
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● 1. 気分が落ちているときに起きること
不安や抑うつの時期には、こんな状態に陥りがちです:
• 外出が減る
• 人と会う機会が減る
• 好きなことや趣味をやる気が起きない
つまり、「やれば気分がよくなる行動」が減ってしまうのです。
この状態が続くと、心がどんどん栄養不足になります。
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● 2. 「やればよかった」と思える行動を探そう
気分が乗らなくても、やってみたら「やってよかった」と思える行動、ありませんか?
たとえば:
• 散歩
• 好きな音楽を聴く
• 動画でお笑いを見る
• 好きな香りをかぐ
• ペットや植物に触れる
• ちょっとだけ掃除や片づけをする
「やる気があるからやる」ではなく、
「やったから気分がよくなる」という発想が大切です。
⸻
● 3. 自分だけの“心の栄養リスト”をつくろう
自分にとって元気が出る行動を、書き出してみましょう。
例:
• お気に入りのカフェでコーヒーを飲む
• お風呂にアロマを入れてゆっくりつかる
• 昔の写真を見返して懐かしむ
• 赤ちゃんや動物の動画を見る
• 家族に「ありがとう」と言ってみる
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● 4. 記録のしかた(ワーク例)
日付 やってみたこと 気分の変化 感じたこと・気づき
月曜 公園を10分歩いた 不安60→40 空がきれいだった、少し気持ちが軽くなった
水曜 好きな曲を聴いた 気分50→30 リズムにのって体が動いた、楽しかった
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● 今週の宿題
1. 自分の「心の栄養リスト」を10個ほど書いてみましょう
2. 1週間の中で、少なくとも3つを実際にやってみましょう
3. そのときの気分の変化や気づきを記録してみましょう
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● おわりに
落ち込んでいるとき、私たちは「楽しいこと」をつい遠ざけてしまいます。
でも実は、元気が出る行動ほど、意識して“やってみる”必要があるのです。
小さな「楽しいこと」は、心のビタミン。
笑顔や安心感の種を、少しずつ自分にプレゼントしてあげましょう。
第10週講義
「気分の波とうまく付き合う」
~落ち込みや不安が強いときの対処法を身につけよう~
【 はじめに】
気分は毎日変わります。特に不安や落ち込みが強くなる“波”があるのは自然なことです。
今週は、そんな「気分の波」を完全に消すのではなく、うまく付き合う方法を学びましょう。
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● 今日の目的
• 自分の気分の波に気づく
• 気分が悪いときに使える具体的な対処法を知る
• 自分に合った方法をいくつか見つける
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● 1. 気分の波を知ろう
誰でも、気分は上下します。
落ち込みや不安が強い時は、
• 体がだるい
• 考えがネガティブになる
• やる気が出ない
そんな状態になりやすいですね。
大切なのは、「これは一時的な波だ」と理解することです。
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● 2. 気分が悪いときに試せる対処法
(1) 呼吸を整える
深呼吸をゆっくり3回繰り返すと、心が落ち着きやすくなります。
(2) 五感を使う
好きな匂いをかぐ、肌触りのよいものを触るなど、今の自分に優しい刺激を与えましょう。
(3) 簡単な体の動き
ストレッチや軽い散歩で体を動かすと気分が変わることがあります。
(4) 「今の気分」を受け入れる
無理に元気を出そうとせず、「今はつらいんだな」と自分の気持ちを認めましょう。
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● 3. 自分だけの「対処リスト」を作ろう
自分に合う対処法をメモしておくと、波が来たときにすぐ使えて安心です。
例:
• 深呼吸を3回する
• 好きな音楽を5分聴く
• 部屋の窓を開けて空気を入れ替える
• お茶をゆっくり飲む
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● 4. 記録のしかた(ワーク例)
日付 気分の状態 試した対処法 効果・感想
木曜 不安が強い 深呼吸と窓開け 少し気持ちが落ち着いた
金曜 だるさが強い 軽くストレッチ 体が軽く感じられた
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● 今週の宿題
1. 気分の波を感じたら、上記の対処法のうち一つ以上を試してみる
2. どんな変化があったか簡単にメモする
3. 自分に合いそうな対処法を3つ以上見つけてみる
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● おわりに
気分の波は誰にでもあります。
大事なのは「波を消すこと」より「波と上手に付き合うこと」。
ゆったりした気持ちで、自分に優しく接してみましょう。
第11週講義
「認知行動療法のまとめとこれからの活用法」
~学んだことを生活に生かし、長く続けるコツ~
【はじめに】
ここまで12週間の認知行動療法プログラムを進めてきました。
今週は、これまでの学びを振り返り、今後も自分で続けていくためのコツをお伝えします。
【今日の目的】
• 認知行動療法のポイントを振り返る
• 継続するためのコツを知る
• 自分らしい工夫で療法を生活に取り入れる方法を考える
1. 12週間の振り返り
この期間に学んだ大切なことは
• 自分の思考や行動のクセに気づく
• ネガティブな考え方をゆるやかに変える
• 悪循環の行動パターンを少しずつ変えてみる
• 心の栄養になる行動を意識して増やす
• 気分の波とうまく付き合う工夫を持つ
2. 続けるための3つのポイント
① 無理をしない
完璧にやろうとせず、小さな変化を大事にしましょう。
② 振り返りの時間を作る
週に1回、簡単にでも「自分の気持ちや行動の記録」を見返す習慣をつけると効果的です。
③ 自分に合う方法を見つける
ここで紹介した方法をすべてやる必要はありません。
自分に合うものを選んで工夫していきましょう。
3. 日常生活での活用例
• 不安や落ち込みを感じたら、「自分の思考に気づく」ことを習慣にする
• 悪循環を感じたら、無理なく少し違う行動を試す
• 好きなことやリラックスできることを積極的に生活に取り入れる
• 気分が落ちたときの対処法リストを活用する
4. 支えが必要なときは
自分で続けることが難しいと感じる場合は、専門家のサポートを受けることも大切です。
認知行動療法は、カウンセラーや医師と一緒に進めることも可能です。
【 今週の宿題】
1. これまでの記録やノートを見返して、気づきや変化を書き出す
2. 自分に合う方法や工夫を3つ以上ピックアップする
3. 今後の目標や続けるためのアイデアをメモしてみる
【 おわりに】
認知行動療法は「心のセルフケア」の一つです。
日々の小さな積み重ねが、あなたの心を支え、前向きな毎日を作ります。
これからも、自分のペースで無理なく続けていきましょう。
第12週講義
「これからの自分を支える認知行動療法」
~セルフケアの習慣を続け、未来に希望を持とう~
【はじめに】
12週間のプログラムの最後の講義です。
ここからは、自分自身の心を支え続けるために、認知行動療法の知識や技術をどう活かしていくかを考えます。
【今日の目的】
• 自分のセルフケアの習慣を確認する
• 困った時の対処法を再確認する
• 未来に向けて希望を持つことの大切さを理解する
1. セルフケア習慣の再確認
これまで作ってきた「心の栄養リスト」や「対処法リスト」はあなたの大切な道具です。
これらを日常の中で続けることが心の安定につながります。
2. 困った時のサインと対処
心がつらくなったときは、
• 自分の気持ちを言葉にしてみる
• リストにある対処法を試す
• 無理せず休むことを許す
これが大切です。
3. 「未来に希望を持つ」こと
認知行動療法は、過去や現在の問題だけでなく、未来をより良くする力も育てます。
• 小さな目標を立ててみる
• 自分の成長を認める
• 困難も乗り越えられる力が自分にあると信じる
この気持ちが、日々の暮らしを支えます。
4. 周囲とのつながりも大切に
心の健康は、一人だけの問題ではありません。
信頼できる人に話したり、助けを求めることも忘れずに。
【今週の宿題】
1. 自分のセルフケアの良いところ、これから続けたいことを書き出す
2. 困った時に使う対処法を再確認し、改めて整理してみる
3. 未来に向けての小さな目標を一つ立ててみる
これで12週間の認知行動療法プログラムは終了です。
ここで学んだことが、あなたの心の支えとなり、毎日を少しでも楽にしてくれることを願っています。
今後も自分の心に耳を傾け、無理なく続けていきましょう。
よくある質問(FAQ)と回答
Q1. 認知行動療法って本当に自分だけでできますか?
A: はい、基本的な考え方や方法はご自身でも学び、実践できます。
ただし、症状が重い場合や自分だけで対処が難しいと感じた場合は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
Q2. 思考や感情を変えるのは難しいのですが…
A: 変化は一朝一夕には起きません。
少しずつ自分の考え方に気づき、ゆるやかに見直していくことが大切です。
焦らず、継続的に取り組みましょう。
Q3. ネガティブな考えを無理にポジティブに変えなければいけませんか?
A: いいえ、無理にポジティブになる必要はありません。
大切なのは「すべてが悪い」と決めつけず、もっと柔軟に考えられるようになることです。
Q4. 行動を変えるのは意志が弱くてできません。どうしたらいい?
A: 意志だけに頼らず、「小さなステップから始める」「環境を整える」「やる気が出なくても行動を先にする」など、方法を工夫しましょう。
続けるうちに少しずつ習慣化されます。
Q5. 記録をつけるのが面倒で続きません。
A: 書くこと自体が目的ではなく、自分の気持ちや行動に気づくことが目的です。
無理なく続けられる方法(スマホメモや音声記録など)を見つけてみてください。
Q6. 気分の波が激しくて、どう対処すればいいか分かりません。
A: まずは「波は自然なもの」と理解し、深呼吸や五感を使ったリラックス法など簡単な対処法を試してみましょう。必要なら専門家の助けも検討してください。
Q7. 認知行動療法はどのくらい続ければ効果が出ますか?
A: 個人差がありますが、数週間から数ヶ月の継続で変化を感じる方が多いです。焦らず続けることが大切です。
Q8. もし途中で挫折したらどうすればいい?
A: 挫折しても大丈夫です。
休んだり、やり方を変えたりして再スタートしましょう。
大切なのは「自分を責めず、また始める気持ちを持つこと」です。
終わりに
あなたの心にそっと寄り添って...
12週間のプログラム、本当におつかれさまでした。
ここまでご自身の心と向き合いながら、少しずつ歩んできたあなたに、心からの拍手をおくります。
この講座では、「気づくこと」や「ちょっとした工夫」がどれだけ大切かを、丁寧に学んできました。
すべてが完璧でなくても大丈夫。
がんばれない日があってもかまいません。
大切なのは、「心を大切にしよう」と思ったその気持ちです。
これからの日々も、気分の波や不安に揺れることがあるかもしれません。
でも、あなたにはもう、自分をやさしく見つめる力が育っています。
これまで学んだことを思い出しながら、自分のペースで続けていってくださいね。
認知行動療法は、心を整えるちいさな習慣。
いつでも戻ってこれる、あなたの安心できる場所です。
どうかこれからも、ご自身の心にやさしく。
そして、穏やかな日々がそっと続いていきますように。
心からのエールを込めて。